なぜ今、PDRNが再び注目されているのか――トナーパッドと『サーモンDNA』の組み合わせ

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PDRNはサーモンDNA由来の整肌成分です。韓国ではこの成分をトナーパッドに取り入れた製品群が登場し、世界的な話題になっています。なぜ今この組み合わせが注目されているのか、初めて使う際に知っておきたいポイントとあわせて解説します。

韓国のビューティーコミュニティで、ここ最近あらためて注目を集めているのが、サーモンDNA由来の整肌成分「PDRN」とトナーパッドの組み合わせです。もともとはクリニック由来のイメージが強かった成分が日常的なスキンケアへと下りてきたことで、SNSでは“サーモン涙パッド”のような愛称まで広がり、品切れが話題になるほどの盛り上がりを見せています。韓国の百貨店やドラッグストアでも関連商品の売り切れ表示が目立つようになり、関心の高さがうかがえます。海外の読者にとっては少し特殊な流行に見えるかもしれませんが、その背景を理解するには、まずPDRNという成分そのものと、どう広がっていったのかを押さえておく必要があります。

PDRNは「ポリデオキシリボヌクレオチド」の略で、一般的にはサーモン由来のDNA断片を精製した成分として知られています。肌のコンディションを整えたり、バリア機能をサポートしたり、刺激を受けた肌を穏やかにケアしたりする目的で注目されてきました。「サーモンDNA」という言い方だけを聞くと抵抗感を覚える人もいますが、実際の化粧品に使われるのは不要な要素を取り除いた精製成分であり、ブランド側はむしろやさしい使用感を訴求することが多いです。こうした“医療発想”と“低刺激イメージ”の両立が、PDRNを注射系の施術だけでなく、美容液やクリーム、さらにパッド製品へと広げていく後押しになっています。

そこに組み合わさったのが、韓国コスメで定番化している「トナーパッド」というフォーマットです。トナーパッドは、化粧水やエッセンスをたっぷり含ませたコットンやジェル状のパッドのことで、手に取ってなじませる手間が少なく、拭き取り・保湿・部分パックまで手軽にこなせるのが魅力です。この使いやすさを武器に、APRのMedicubeブランドはトナーパッド製品群だけで世界累計2,000万個以上を販売し、そのうち7割以上が海外で売れたとされています。代表格の「Zero Pore Pad」はAmazonのトナーカテゴリーで1年以上首位を維持したとされ、その後もDeep Vita C Pad、Red Succinic Pad、エクソソーム配合の鎮静系パッド、PDRNジェルパッドなどへとラインアップを広げていきました。

PDRN成分とトナーパッドの組み合わせが注目される理由を説明するイメージ
PDRN成分とトナーパッドの組み合わせが注目される理由を説明するイメージ

PDRN配合のジェルパッドやトナーパッドがここまで話題になった理由は、大きく分けて二つあります。ひとつ目は、“医療っぽい成分”を“毎日使える形”に落とし込んだことです。PDRNは再生やハリ感といった文脈で語られることが多く、もともと専門性の高い成分として認識されていました。それをやわらかいジェルパッドやトナーパッドに入れることで、先進的なのに取り入れやすいという印象が生まれました。韓国メディアによると、Medicubeは2025年6月ごろからPDRNラインを本格的に展開し、既存のスキンケアカテゴリーを拡張していったとされています。エイジングケアやハリ感への期待が口コミで広がるなか、発売から1年でPDRNライン単独の世界累計販売数が1,500万個に達したという報道もありました。その後はPDRNピンクコラーゲンジェルマスク、フィラーアンプル、トナー、セラム、保湿クリーム、日焼け止め、ミストなどへと展開を広げ、市場をさらに押し広げています。

二つ目は、拡散のされ方です。PDRNの一般認知が一気に進んだきっかけのひとつとして、皮膚科医がSNS上で「PDRN配合の人工涙液を顔に塗ると肌の回復を助ける可能性がある」といった内容を紹介した動画の拡散が挙げられます。こうした動画が話題になるにつれ、PDRN入りの人工涙液が品薄になり、“サーモンDNA”を前面に出したマスクやパッドがひとつのトレンドカテゴリとして定着していきました。さらに流れを加速させたのがセレブリティの露出です。モデルのヘイリー・ビーバーがMedicubeのPDRNピンクコラーゲンジェルマスクを使用している写真をSNSに投稿すると、TikTokやInstagramでは同じ商品を試す投稿が一気に増え、検索数やレビューも急増しました。こうしたバイラル効果とブランドの素早い商品展開が重なり、PDRNパッドはグローバルなK-Beautyトレンドとして認識されるようになったのです。

一方で、海外の読者が誤解しやすいポイントもあります。PDRNはしばしば刺激の強い言い方で「サーモンの精子由来DNA」と紹介されることがありますが、化粧品に使われるのはあくまで精製されたDNA断片であり、生っぽいにおいや危険性を想像する必要はありません。また、使い方も製品によってかなり異なります。一般的なトナーパッドは数分程度の使用を想定している一方、Medicubeのピンクコラーゲンジェルマスクは有効成分がしっかりなじむまで約4時間貼る設計になっています。感じ方や仕上がりは肌状態によって個人差があるため、美容医療のような劇的な変化を期待するよりも、保湿や鎮静を補助するアイテムとして捉えるほうが現実的です。なお、最近では動物由来原料を避けたい層に向けて、高麗人参由来などの植物性PDRNを採用する製品も登場しています。

要するに、韓国で再燃しているPDRN人気は、K-Beautyが得意としてきた“話題性のある成分を、使いやすい日常フォーマットに落とし込み、SNSで一気に広げる”という流れの延長線上にあります。クリニック由来の印象を持つサーモンDNA成分を、パッド・マスク・アンプルといった日常使いしやすい形に変換したことで、再生やハリ感といった訴求がぐっと身近なものになりました。そこに手軽さ、見た目のわかりやすさ、そして著名人の発信が重なり、トレンドとしての勢いが一段と強まったわけです。PDRNトナーパッドのヒットは、単なるひとつの売れ筋商品の話ではなく、韓国ビューティー市場が新しい成分とフォーマットをどう掛け合わせて世界的な流行をつくっていくのかを示す好例だと言えます。